■スパイ・諜報における意味(二重スパイ・裏切り)
スパイ活動(エスピオナージ)の文脈では、「二重スパイ(Double Agent)」や「裏切り・裏切り行為」を指す
仕組み:A国に所属するスパイが、B国に捕まるか寝返って「B国の仲間」になったフリをし、さらにA国を欺いて偽情報を流す(あるいはB国をさらに欺く)ような複雑な騙し合いを意味する。
語源:裏切りを示す十字(Cross)を重ねる(Double)、または裏切り者を処刑する十字架(Cross)に由来する など諸説ある
二重スパイ(ダブル・エージェント)
表向きは自国(または依頼主)のために活動しながら、裏では敵対組織や敵国に寝返り、元の組織を騙して情報操作を行うスパイ。
イギリスの暗号名「ダブル・クロス・システム(Double Cross System)」に代表されるように、単なる情報提供にとどまらず、敵国に「偽の成果」を信じ込ませて作戦全体を誘導する、最高度に高度で危険な工作手法です。
■二重スパイの基本的な仕組み
寝返り(ターン):
本来敵側のスパイである人物を捕らえるか脅迫・買収し、自国の味方(二重スパイ)として送り返す。
潜入(イントルージョン):
自国の工作員を「寝返ったフリ」をさせて敵組織に送り込む。
自己志願(ヴォランティア):
金銭や思想、報復などの理由で自ら敵国へアプローチし、寝返る。
■提供する情報の種類
本物の情報(チキンフィード / Chicken Feed):
相手の信頼を得るために意図的に渡す、本物だが価値の低い情報。既に知られているため相手に渡しても問題ない情報。
偽情報(ディセプション / Deception):
最終的に相手を誘導・欺くために混ぜ込む、決定的なウソの情報。
■歴史上有名な「ダブルクロス」事件・作戦
ダブル・クロス・システム(第二次世界大戦・イギリス)
第二次世界大戦中、イギリスのMIn(軍事情報部)は、自国に送り込まれてきたドイツのスパイをほぼ全員捕捉し、二重スパイとして逆利用した。
ノルマンディ上陸作戦
工作員「ガルボ(Garbo)」ことフアン・プジョル・ガルシアは、ガルボは「イギリス国内に巨大なスパイ網を持っている」とドイツ軍を騙し、連合軍のノルマンディー上陸成功(D-Day)に際して、「連合軍の本命の攻撃目標はノルマンディーではなくカレーだ」という偽情報を流し続けた。
ケンブリッジ・ファイブ(冷戦期)
冷戦期最大規模の二重スパイ事件。キム・フィルビー(Kim Philby)を中心にしたイギリスの超名門ケンブリッジ大学の出身者5名が外務省、MI6(秘密情報部)、秘密警察組織といった対ソビエト防諜部門のトップにまで上り詰め、裏ではソビエト連邦(KGB)に情報を提供し続けていた。MI6の対ソ工作活動がすべてソビエト側に筒抜けになり、イギリスとアメリカに大きな被害をもたらした。
オルドリッチ・エイムズ事件(1980〜90年代)
CIA(アメリカ中央情報局)の反スパイ部門幹部であったオルドリッチ・エイムズが、ソ連(のちのロシア)に渡り、金銭目的で、ソ連国内でアメリカのために活動していた「米側の二重スパイ(ソ連の寝返り工作員)」たちのリストをソ連側に売り渡した。その結果、10名以上の貴重な内部協力者がソ連政府によって逮捕・処刑され、CIAのソ連情報網は一瞬にして壊滅した。
■二重スパイのリスク
二重スパイは自分が「常に両側から裏切り者として命を狙われる」という危険な状態に置かれる。
二重スパイを使う側には「二重スパイが実は『三重スパイ(トリプル・エージェント)』で、敵側である」という危険がつきまとう。