1928年、蒋介石率いる国民革命軍が北京を占領し、長年の軍閥割拠に一応の終止符を打った。 これに伴い、1929年には上海の食糧事情が改善され、徐々に北方の農村から農産物が入ってくるようになった。
しかし皮肉なことに、流通の改善によって国内産の小麦が届くようになる一方で、北米などからは安価な輸入小麦粉が大量に流入。市場価格は暴落し、深刻な在庫過剰を引き起こしていた。
このような状況で、卸売商人の梁徳海(リャン・ドーハイ・55歳)が経営する上海の徳海産業倉庫には、良質な国産小麦粉が大量に売れ残ってしまっていた。

「これほど質の良い小麦粉なのに、安価な輸入粉に押されて売れないとは……時期が悪かったか」
そこへ社員が青ざめた顔で書類を持ってやってくる。
社員A「社長、製粉業者や生産者から支払請求が来ています」
徳海「もう支払期限か。適正な価格で支払ってやりたいが、この山のような在庫が片付かない限り、我が社も終わりだな……」
上海は湿気が多く、長期間放置すればダニやカビが発生し、塊になって売り物にならなくなる。
「食品だから長くはもたない。見通しが甘かったな」と徳海は呟いた。
その頃、幸福商会のVV(薇薇)とMG(マリゴールド)は、狗蛋(ゴウダン)の考案したお菓子を生産する製菓工場の稼働に向け、準備に大忙しだった。
VV「製菓工場の用地は、張文魁さんの紡績工場の土地が余っててよかったね。これで子供たちの働く工場がもっと大きくなるよ!」
VV「来年は秀蘭さんの農園で採れた桃を入れたお菓子も作れそうだね」
MG「ちょっと VV、小麦粉はどうするの?それと、砂糖とバターも」
VV「小麦粉?砂糖?バター?」
MG「これだけのお菓子を生産するつもりなら、相当な分量の小麦粉や砂糖が必要でしょ?フルーツは確保したけど、肝心の小麦粉は?」
VV「小麦粉をすっかり忘れてた……」
MG「一番大量に必要な材料じゃない!」
ある日、徳海の会社に電話が入る。
社員B「はい、徳海産業倉庫です。……え、何ですって!?」
電話口の勢いに圧倒されつつ、社員Bは受話器を押さえた。
社員B「無理を言わないでください!そんな急に……ちょっと待ってください、社長に確認します!」
社員Bは社長室に駆け込んだ。
社員B「社長、大変です!緊急事態です!」
徳海「何だ、借金の催促か?」
社員B「いえ、幸福商会さんから小麦粉の注文です!」
徳海「注文?粉なら倉庫に腐るほど余ってるだろう。売れるならいくらでも売ってやれ」
社員B「それが……『今すぐ良質な小麦粉を1万キロ納品してほしい。さらに来月以降も継続して毎月同量を納めてくれ』と!」
徳海「1万キロ……10トン!?しかも毎月だと!?」
社員B「はい!このペースだと、倉庫の在庫が全部ハケるどころか、すぐに在庫が足りなくなってしまいます!」
徳海は一瞬呆然としたあと、頭を抱えて笑い出した。
徳海「あんなに余って困っていた小麦粉が……足りなくなってしまうだと!?ハハハ!そりゃあ困った、大至急追加の仕入れを手配しろ!」
その頃、幸福商会では——。
MG「いきなり大量発注されて、徳海産業倉庫さんは今頃パニックを起こしているわよ」
VV「ふふ、これだけの質の良さを誇る小麦粉なら、徳海さんのところしか考えられないからね。他には頼めないよ」
VVは満足そうに笑った。
【2026-09-28/260506-1,260605-3(3)】
【Youtube動画】
社長:(上海語)介好嘅面粉,箇么便宜嘅洋粉押牢,賣箇銷路都無……/(日本語)良質な小麦粉なのに、安価な輸入粉に押されて売れないなんて……