北伐と国共合作は、1920年代の中国革命を大きく転換させた政治的・軍事的プロセスである。
国民党と中国共産党が協力し、軍閥割拠の中国を統一しようとした試みであり、その成功と崩壊が後の中国内戦の構造を決定づけた。
■ 国共合作とは何か
国共合作とは、中国国民党(KMT)と中国共産党(CCP)が協力して革命を推進した政治同盟である。
●第一次国共合作(1924〜1927年)
ソ連の支援を受け、国民党は共産党員の個人資格での入党を認め、両党は「反帝国主義・反軍閥」を共通目標として協力した。
●目的
・軍閥による分裂状態の打破
・統一国家の樹立
・帝国主義勢力の排除
・労働者・農民運動の組織化
国共合作は、革命のための“戦略的同盟”であり、両党の思想的対立を一時的に棚上げした協力体制であった。
■ 北伐の開始(1926年)
北伐は、国民革命軍が中国を統一するために行った大規模軍事作戦である。1926年7月、蒋介石を総司令として開始された。
●北伐の主な敵(三大軍閥)
・湖南・湖北の軍閥:呉佩孚
・華中の軍閥:孫伝芳
・華北の軍閥:張作霖(奉天軍閥)
●北伐の進展
国民革命軍は士気が高く、労働者・農民の支援を受けて軍閥勢力を次々と撃破した。
・1926年末: 武漢を占領
・1927年初: 南京・上海へ進撃
・各地で労働者のストライキ・蜂起が発生し、革命運動が拡大
北伐は軍事作戦であると同時に、都市の労働運動と農村の農民運動を伴う社会革命でもあった。
■ 国共合作の内部矛盾
北伐の成功とともに、国共合作の内部矛盾は急速に拡大した。
●国民党右派(蒋介石)
・資本家・商人・外国勢力と連携
・労働運動の急進化を警戒
・共産党の影響力拡大を脅威と認識
●国民党左派(武漢政府)
・労働者・農民運動を支持
・共産党と協力して革命を推進
・蒋介石の保守化に反発
●共産党
・労働者・農民の組織化を強化
・北伐軍の進撃に合わせて都市蜂起を展開
・革命の主導権を求めて活動を拡大
この三者の利害は一致せず、北伐の進展とともに対立は激化した。
■ 上海での緊張(1927年春)
上海は中国最大の工業都市であり、労働運動の中心地であった。
・1927年3月: 共産党の指導による Shanghai 労働者の第三次武装蜂起が成功
・労働者武装組織「工人糾察隊」が市内の治安を掌握し、共産党の影響力が急速に拡大
・これに対し、資本家・租界の外国勢力・秘密結社(青幇)は強い危機感を抱き、蒋介石に接近
北伐の成功は、上海という巨大都市での権力争奪戦を引き起こしたのである。
■ 国共合作の崩壊(1927年)
1927年4月12日、蒋介石は上海で武力弾圧を実行し、共産党と労働運動を徹底的に排除した(上海クーデター)。
・共産党員・労働者の大量逮捕・殺害
・蒋介石による南京国民政府の樹立と、親共派の武漢政府との決裂(寧漢分裂)
・同年7月、武漢政府も反共に転じたことで国共合作は完全に崩壊し、南京政府へ収斂
・共産党は都市での基盤を失い、農村での武装闘争へ戦略転換
■ 歴史的意義
北伐と国共合作は、中国近代史の構造を決定づけた。
・軍閥割拠の時代を終わらせ、南京国民政府による中国統一への契機となった
・国民党は国家形成を進めたが、共産党との決定的な対立を抱え込むこととなった
・共産党は農村包囲戦略へ転換し、後の長征・中国内戦へとつながった
・都市中心の労働者革命から、農村中心の農民革命への大きな転換点となった
北伐と国共合作は、中国革命の“前史”であり、後の内戦の起点となる重要な歴史的プロセスである。