上海のトラム(Tram) — 幸福路の街並みに響く、近代上海の都市交通
■ 基本情報
名称:上海のトラム(路面電車) 種別:都市交通(電気式路面電車) 年代:1908年〜1930年代 運行会社:公共租界電車公司・法商電車公司・上海電車公司 特徴:標準軌のレール、直流電化、街路を滑るように走る鋼輪車両
■ 概要
上海のトラムは、20世紀初頭の上海を象徴する近代交通である。 鋼の車輪が鋼のレールを滑り、電気の力で街を走るその姿は、 「文明のスピード」を市民に実感させた。
公共租界・法租界・中国系会社の3社が運行していたが、 軌間や電圧などの基本規格はほぼ共通で、 市民は会社の違いを意識せず利用できた。
速度は時速15〜25kmほどで、 自転車より少し速く、しかし急には止まれない。 その特性が、上海の雑踏に独特の緊張感を生んでいた。
■ 構造と特徴
レール(標準軌 1,435mm) 上海のトラムは標準軌を採用し、街路に埋め込まれた溝付きレールを走る。 複数会社の路線がつながり、都市全体を網の目のように結んだ。
車体(鋼製・2.2〜2.4m幅) 重厚な鋼製車体。窓の形や塗装は会社ごとに異なるが、 基本構造は共通しており、どの停留所にも入れる。
電力(直流600V前後) 屋根のポールから電線の電力を受けて走る。 電気式のため排気がなく、当時としては“清潔な乗り物”とされた。
ブレーキ(急制動不可) 鋼輪×鋼レールのため摩擦が小さく、急停止はほぼ不可能。 時速20kmで走行中にブレーキをかけても、20〜40mは滑る。 この“止まれなさ”が上海の交通風景の一部だった。
車庫・整備場(会社ごと) 3社はそれぞれ自社の車庫・整備場を持ち、点検・修理を行った。 ただし規格が共通のため、故障時には他社の車庫へ“緊急避難”することもあった。
■ 運行と街の風景
速度感 自転車で追いかければ届きそうで届かない、 そんな絶妙な速度で街を滑るように進む。
ベルの音 会社ごとに微妙に違うベルの音があり、 市民は音で「どこの車両か」を聞き分けることもあった。
雑踏との共存 人力車・自転車・歩行者が入り混じる上海の街で、 トラムは“止まれない巨大な文明”として存在感を放った。
■ 上海1930(kisono1930)物語における意味
トラムは、kisono1930において 「街の息づかいを運ぶ存在」であり、 重要な舞台装置として登場している。
【主な登場場面】
第8話「ヘイゼルナット嬢誘拐事件」誘拐犯の追跡に少年探偵団が利用
第13話「アッシュ四世爆殺未遂事件」車いすのノラミがトラムに轢かれそうになる。
茶話8「VVの幼少期」幼少のVVが遠くに行くときの移動手段