ヘイゼルナット嬢誘拐事件

1928年上海市紅江区
紅烈が少年たちを集めて「少年探偵団」を結成した頃、VV(薇薇)もまた近所の女の子たちをまとめて「少女諜報団」を立ち上げた。
マナは学力の優秀さを活かし、子どもたちに勉強を教えている。
マナの妹・サナとサーラも団に出入りしており、家族は「危ないことをしていないか」と少し心配している。

子どもたちが集まるのは、いつも駄菓子屋ヘイゼルナット。
お店のエリサお姉さんは優しいが、子どもたちはお金がなく、いつも店先でお菓子を眺めるだけ。
VVが買うときに時々おまけをしてくれるのが、子どもたちのささやかな楽しみだった。

ある日、ヘイゼルナットの周辺に見慣れない男たちが現れ、店の様子をうかがうようになった。
「買収か?」「土地ころがしか?」と子どもたちが遠巻きに見ていると、
突然、数人の男がエリサを車に押し込み、そのまま連れ去ってしまった。

少女Aが叫ぶ。
「追うよ!」
少年Bが応じる。
「分かってる!」

子どもたちは車の後を走り、人力車やトラムにしがみつきながら必死に追跡した。
少女Cは誘拐した車の特徴とナンバーを覚え、店に戻ってVVへ電話。
少女Dは幸福商会の白執事へ連絡し、白執事は車のナンバーから犯人がドイツ軍関係者であることを突き止める。

VVとMG(マリゴールド)がヘイゼルナットの店に来て、エリサの母に事情を尋ねると、母は震える声で語り始めた。
エリサは、バイエルン近くの小王国に生まれた王家の末裔。
本名は エリーザ・フリューゲル。
父の亡くなった後、彼女はただ一人の正当な継承者であったため、身を隠すために「エリサ・ヘイゼルナット」と名乗って上海で暮らしていた。
ドイツ軍が彼女を連れ去ったのは、王党派に奪われるのを防ぐためだった。

子どもたちはエリサが乗せられた船にこっそり乗り込み、後を追ったが、ドイツ兵に捕まってしまう。
エリサは子どもたちを庇い、毅然と言い放つ。
「この子たちには危害を加えさせないわ」
「あなたはドイツ人だろう。中国の子どもより祖国を守るべきだ」
軍人の言葉に、エリサは首を振った。
「いいえ。私は私よ。そして、この子たちは私の大切な仲間なの」

VVがナディアに救出を頼むと、ナディアは迷いなく武装船を出した。
MG「ちょっとナディア、もっと平和的な方法があるでしょう?」
ナディア「うちは先祖代々こうやって解決してきたのよ」
ドイツ軍は上海で管轄権がないため、公海上でエリサを本国へ送ろうとしていた。

そこへ、王国復興派のボートが現れ、エリサに向かって叫ぶ。
「姫様、こちらへ!」
突然の事態にエリサはうろたえる。
「私はただのお菓子屋の娘なのに……」

ドイツ軍と復興派の船が銃撃を始め、エリサと子どもたちの身が危険にさらされる。
ナディアは怒りを爆発させた。
「なんてことを……許せません!」
彼女は大砲をドイツ軍と復興派の船のすぐ脇に撃ち込み、海面が大きく跳ね上がる。
(当てはしないが、威力は十分)

マナが叫ぶ。
「ナディアさんの方が危険です!」
港では市民が空を見上げていた。
市民「花火か?」
警官「今日は花火なんて聞いてないぞ」
大砲の威圧に耐えられず、両船は白旗を上げた。

乗員たちはナディアの船に引き上げられ、甲板で即席の裁判が開かれた。
裁判長はマナ。
王家復興派は言う。
「姫様を王家へお迎えし、復興を果たします」
ドイツ軍は言う。
「あなたを守り、不自由ない生活を保障します」
マナ「状況は分かりました」
そして静かに問いかけた。「でも一番大切なのは、本人の気持ちです。エリサさん、あなたはどうしたいのですか?」

エリサは迷いなく答えた。
「私はヘイゼルナットのお店で静かに暮らしたい」
そして続ける。
「共同租界にはドイツ人もいて、私もドイツ人だという自覚はあります。
でも私は上海で育ち、この街の人たち皆が、私の仲間です。
お姫様として守られるのではなく、街の人たちと共に生きたいのです」
ナディアが両者に向き直る。
「分かりましたね。わかったら二度と事件を起こすんじゃありませんよ。ほほほ」

MGは苦笑した。
「ナディアの性格がよく分かったわ」
子どもたちはエリサに駆け寄り、笑顔で言う。
「またお店に行くからね」

やがて、ヘイゼルナットの小さな店は、再びいつもの温かな日常を取り戻した。

【S00020】