上海(しゃんはい)

“魔都”と呼ばれた世界都市

1930年の上海は、アジアでもっとも眩しく、もっとも混沌とした大都市。 大通りには近代的なビルが立ち並び、道路には自動車、トラム、人力車が入り乱れ、昼夜を問わず人の波が絶えない。
西洋と東洋、富裕と貧困、華やかさと闇――そのすべてが同じ街路に同居していた。

■ 多言語表記
日本語: 上海(しゃんはい / じょうかい)
*「じょうかい」は当時の漢音・歴史的仮名遣い。現代は「しゃんはい」
繁体字中国語: 上海
簡体字中国語: 上海
英語: Shanghai
IPA(標準中国語/普通話): /ʂâŋ.xài/
ピンイン(標準中国語発音): Shànghǎi
上海語(現地の言葉): Zånhae / Zaonhe(シャンヘーに近い音)
IPA(上海語): /zɑ̃.hɛ/ または /zã.he/

各国の軍隊がにらみ合う“世界の前線”

フランス租界にはフランス軍とフランス警察が、
共同租界には、英米日を中心に 10カ国以上の軍・警察部隊 が駐留
■共同租界に関わっていた主な国々
 アメリカ海兵隊:共同租界の治安維持に参加
 日本海軍陸戦隊:虹口地区を中心に展開
 イタリア(軍隊や警察の一部として治安維持にも参加)
 ポルトガル(マカオ経由などで古くから多くの居留民が滞在)
 オランダ
 ベルギー
 デンマーク
 スウェーデン
 ノルウェー
 スペイン
 スイス
 万国商団(義勇軍):白系ロシア人・欧米人・日本人の混成民兵
これらの軍隊が、
「租界の外は中国の法律、内は列強の法律」
という奇妙な境界線を守っていた

世界中の貴族が流れ込んだ“亡命者の都”

上海は、
政治的に追われた貴族たちの“最後の避難港”
 白系ロシア人の貴族・将校:ピーク時 約2万人
 清朝の皇族・親王・遺老:フランス租界に豪邸を構える
 欧州の没落貴族:カフェやサロンを開き、欧州文化を持ち込む
ロシア革命で逃げてきた貴族と、辛亥革命で追われた清朝の皇族が、
同じフランス租界の路上ですれ違う――
そんな光景が日常だった。

臨時政府・革命家・テロ組織が潜む“火薬庫”

上海は、合法と非合法の政治勢力が入り乱れる
“世界最大のスパイ都市”であり、
“軍隊・スパイ・革命家・マフィアが同じ街に住む”世界でも類を見ない都市
● 臨時政府・亡命政府
 大韓民国臨時政府(フランス租界)独立運動の拠点。
 1932年に上海天長節爆弾事件が発生。
● 中国の公的勢力
 国民党軍(蔣介石)
 租界の外を統治し、内部の共産党を包囲。
 軍統(国民党特務)
 暗殺・諜報を担当する秘密組織。
● 地下組織・テロ組織
 中国共産党(地下化)
  “中央特科”が暗殺・潜伏活動を実行。
 青幇(チンパン)
  上海最大の秘密結社。フランス租界警察と癒着。
 紅幇(ホンパン)
  港湾労働者を支配する巨大組織。
 王亜樵の暗殺団
  国民党要人や日本軍を狙う過激派。

キリスト教布教と近代化の“アジア最大の拠点”

上海は、
“19世紀から続くキリスト教布教の中心地”であり
“アジア最大の出版都市・教育都市”
●宣教師たちの知のインフラ
 墨海書館(1843年創設):中国初の近代出版社
 美華書館:聖書・科学書・辞書を大量出版
 宣教師たち:⇒医学・教育・科学を上海にもたらす
 中国人知識人との共同翻訳:
 王韜、李善蘭らが西洋の学術を漢訳し、中国や日本の近代化に多大な影響

■上海1930(kisono1930)物語における意味

列強の軍隊がにらみ合い
亡命貴族らが逃げ込み
革命家とスパイが潜伏し
秘密結社が街を支配し
宣教師がキリスト教を広め、西洋の知識をアジアに広めた
世界で最も複雑で、最も危険で、最も魅力的な都市だった。