1927年、ザンジバル。
ナディアが上海へ向かうと決めたとき、父と兄たちは反対した。
「女が商売などできるはずがない」「上海は危険だ」「異教徒に毒される」「食事も不浄だ(ハラルでない)」
口々にそう言って止めようとする。
しかし、母だけはナディアの味方だった。
「あなた、何を言っているんですか。あなたの家だって、私の実家の援助でここまでやってこられたのでしょう? 女の力を舐めないで」
そう言い返され、父はぐうの音も出なくなる。
ナディアは女学校に入学するため16歳で上海へ。
だが、彼女の身の回りには常に召使が30人ほど付き従い、借りようとした下宿も父が勝手に豪邸を購入してしまったため、そちらに住むことになった。
「……まあ、しょうがないわね」
そう苦笑しつつ、ナディアは新しい生活へ踏み出す。
ナディアの家はフランス租界にあり、フランス租界にある女学校に通う予定であったが…
入学前、ナディアは一人で街を探検しようと外へ出た。
だが、結局は召使が5人ついてくる。
同じ日、偶然フランス租界を散策していたVV(薇薇)にも、やはり召使が5人。
二人は街角ですれ違い、互いに思う。
「あら、きれいな娘(こ)」
その一瞬が、二人の記憶に残った。
すれ違った直後、VVはふと別の方向に視線を向ける。
フランス租界の警察官が、貧しい身なりの少年を問い詰めていた。
警官「お前、こんなところで何をしている。悪さをしようとしているんだろう」
少年「オレは使いを頼まれただけだよ。道に迷ったんだ」
少年の表情を見て、VVは嘘ではないと直感する。
VV「ちょっと、そこのポリス。その子が何をしたっていうの?ただ歩いていただけでしょう」
警官「誰だお前は」
VVににらみつける警官の前に、召使たちが割って入る。
「お嬢様!」
たじろいだ警官は鼻を鳴らし、
「ふん……なんだ、小娘が。……(少年に)もう行っていいぞ」
と言い残して去っていく。
VV「ここに長くいるとまた睨まれるわ。早く行きなさい」
少年「ありがとうございます!」
少年は礼を言って走り去った。
その様子を見ていたナディアが、思わずVVの手を取って駆け寄る。
ナディア「あなた、勇気あるのね。この近くに住んでるの?」
VV「いいえ、共同租界から来たの」
ナディア「じゃあ、あなた、この土地とは全く関係ないのに、おせっかいにも、見ず知らずの子を助けたのね。……素敵! ねえ、私の友達になって」
VV「へ?」
ナディア「あなた、女学生なの?どこの学校?」
VV「今年、紅江マリア女学校に入学するんだけど……」
ナディアは振り返り、召使に言う。
「聞いた? 紅江マリア女学校よ。私の入学先も紅江に変更するわ」
召使「承知しました。すぐに手配いたします」
ナディア「あなた、今から私の家に来て。もっとお話がしたいの」
二人はナディアの車に乗り込み、フランス租界の豪邸へ向かう。
VVはナディアの車に同乗し、乗り切れない召使たちは別の車へ。
(ブラックウェル家とバハリ家、それぞれ2台ずつ=計4台)
そのうちの一台で、ナディアの召使がぼそりとつぶやく。
「お互いに苦労しますな……」
VV側の白執事も静かにうなずく。
「まったくです」
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