1929年。
ニューヨーク・ブラックウェル家の清算が終わり、アッシュとマナ、ナディアが上海に戻った。
ニューヨークではティアナを中心に、ニューヨーク幸福商会の事業も安定してきた。
そんな折、ティアナが、ニューヨークから上海にやってくるという。
通常の船なら1ヶ月かかるが、特別に用意された最新鋭の高速船を乗り継いで、その半分の期間でやって来るという。
VV「何故、そんなに急いでるのかしら?」
VVはカーフェイを幸福商会に呼ぶ。
ティアナが到着した日、ティアナが泊まるホテルに
カーフェイと幸福商会メンバー4人(VV、MG、マナ、ナディア)が向かう。
5人を前にティアナが、
「アメリカが秘密裏に満州奉天を攻撃しようとしています。
ニューヨーク・ブラックウェル家に依頼があり、ガン・ブルー様がその依頼を受けたのです」
レオン「奉天をか?俺は奉天を攻めるのは反対だ。メリットが無い」
ティアナ「そのことは、ガン・ブルー様も承知しています。米軍の『現場の先走り』ではないかと。」
レオン「では、なぜガン・ブルーは依頼を受けたんだ?」
ティアナ「ガン・ブルー様はレオン様に、
『米軍から奉天攻略と、日本軍からはそれを阻止する依頼を受けてくれ』と。
そして『奉天で合流して片付けよう』とのことでした。」
レオン「奉天攻撃と防御を同時に?それで、その方策は?」
ティアナ「それはすべてレオン様におまかせすると」
レオン「丸投げか!」
「ご存じの通り、満州大連には(上海ブラックウェルと同様に、)
大連ブラックウェル家があり、従弟のマキシミリアムが当主を務めています」
アメリカが秘密裏に奉天を攻略すれば、大連ブラックウェルに影響が及ぶのは必至。
事前の調整のため、私が上海に参りました」
ティアナ「これから、国際状勢が不穏になる中で、ブラックウェル家はブラックウェル家として、
幸福商会は幸福商会として、生き残りを図らねばなりません」
ティアナ「わたくし、ブラックウェル家が、国際的な諜報組織であることは存じておりましたが、
上海幸福商会も、実は上海を中心にした諜報組織であることを、存じております」
VV「幸福商会って、諜報“組織”だったんだ」
MG「組織だってはやってないけどね。VVが個人でやってるだけだから」
ティアナ「わたくし、満州に着いたら早速、満州幸福商会を立ち上げようと思います」
VV「満州にはすでに大連ブラックウェル家があるのに、なぜ幸福商会を?」
ティアナ「ブラックウェル家は縦の組織。家長を中心にした縦組織です。
縦組織だけでは、これからさらに荒れていく世界を乗り切ることは出来ません。
幸福商会は様々な組織や人を結び付ける横の組織。
満州にも、ブラックウェル家とは別に、幸福商会が必要だと思うのです」
カーフェイ「ティアナ、待て、正気か?満州幸福商会などと…。
その幸福商会というのだけはやめろ!名前がダサすぎる」
VV「そっちか…?」
VV「ティアナとガン・ブルーが満州に行っちゃったら、
ガン・ブルーが当分、上海に来れなくなるじゃん」
MG「VV泣いてる?」
VV「私、ガン・ブルーと結婚したいよ~」
マナ「当分無理じゃないですか(学生だし)」
MG「でも私たちが満州に行けば満州で会えるじゃない」
VV「そうか。よし、いざ満州へ!」
VV「そういえば、元当主のタウシュはどうしてる?」
ティアナ「幸福クリーンという清掃専門の子会社を立ち上げて、地道にやっております」
MG「似合ってるかも」
VV「ビル清掃と言えば、どこにでも入り込めるね。満州でも…」
ティアナ「おっしゃる通りです」
ナディア「商売に見せかけて、その実は諜報活動ね…」
ティアナ「幸福クリーンには、上海で修業した例の20人がおりますから」
VV「戦争は、防ぐことは出来ない。
でも、戦争に勝っても負けても、そこに住む人びとが生き延びられさえすれば、
それは人間の勝利なのよ」
MG「そのためにどうするの?」
VV「そのためにはネットワークよ。最後は生き抜く術を持っている者が生き残る。
知識でも、技術でも、お金でもいい。とにかく価値のあるものを持っていた者が生き残る」
レオン「何か思い付いたのか?」
VV「満州の街中にサービスと物流のネットワークを作る。最初は清掃サービスと宅配運送から」
MG「最初が何か、地道ね」
当時は、清掃も警備も、宅配も、すべて自給自足だった。今考えると非効率だが、当時は分業と協業の発想がなかった。
VVは満州でこれをたちあげようとしている。
カーフェイ「俺は気が乗らない」
VV「行かないの?」
カーフェイ「行くことは行く」
MG「行くんじゃない」
【s00023】