石庫門(シークーメン)

石庫門(Shikumen) — 上海の生活建築

石庫門の門戸が開いているところ

■ 基本情報
・名称:石庫門(シークーメン)
・種別:住宅建築
・年代:19世紀末〜
・材質:煉瓦・木材・石材
・特徴:黒漆の門扉、石の門枠、細い路地(弄堂)に面した縦長構造

■ 概要
石庫門は、近代上海を象徴する伝統的な集合住宅建築です。
厚い石の門枠が黒い木製の扉を囲む構造から、この名がつきいた(「庫」は保護・囲むの意)。
外観は西洋風のレンガ造りでありながら、内部は中国伝統の中庭を中心とした間取りになっており、「洋中折衷住宅」の代表例として知られている。

■ 構造と特徴
1.全体配置(弄堂構造)
・弄堂(ロンタン):敷地全体を貫くメインの路地(総弄)と、各住戸をつなぐ幅1〜2mほどの細い路地(支弄)がグリッド状に張り巡らされた空間構造。
・連棟式配置:木造・煉瓦造りの2〜3階建て住宅が長屋状に続いている。

2.門戸と外壁(名前の由来)
・石フレームの門:正面入口には、花崗岩などの石材(または疑似石)で縁取られた堅固な石枠が設置されています。門の上部には、バロック調ペディメント(三角破風)などの西洋風意匠が施されている。
・黒漆の厚扉:頑丈な黒漆塗りの2枚開き木製扉と真鍮のドアノブが取り付けられ、防犯性とプライバシーを確保している。

3.内部空間の基本構成
・天井(ティエンツァイ):正門を入ってすぐにある吹き抜けの小さな中庭。採光・通風の要であり、外部と居室を仕切るバッファーゾーン。
・前廳(フロントホール):廳(フロントホール):家の顔となる空間。祖先の位牌や簡素な家具が置かれ、来客を迎える。
・客堂間(カタントン):1階正面のメインルーム。応接や家族の集まりに使用される伝統的な接客空間。
・客房・廂房(シャンファン):1階中庭の両脇、または2階に位置する居室。寝室や書斎として利用される。
・亭子間(ティンジカン):1階北側キッチンの上部(中2階)にある10㎡前後の小部屋。夏暑く冬寒い環境だが、安価なため多くの文人・作家に借室された。
・晒台(シャイタイ):屋上に設けられた、洗濯物を干すためのテラス・バルコニー空間。
・後廳(居間):家族が集まり、食事・団欒・作業など多目的に使われる居間。
・厨房(台所):かまどが置かれた生活感の濃い空間。
・階段:木製の急で狭い階段。足音が響くギシギシと鳴る。
・二階・三階:家族構成に合わせて仕切られた寝室や収納空間。

4.構造・資材の技術的特徴
・立面構造:外壁は赤煉瓦や青煉瓦を積んだ組物構造。内部骨組みには木造の柱や梁を併用する混構造が多用された。
・洋中折衷の装飾:外観のレリーフにはバロック、アールデコ、新古典主義などの西洋様式を取り入れ、内部の空間配置や木彫には中国伝統様式を残す高度な意匠が特徴。

    ■上海1930(kisono1930)物語における意味
    幸福路の裏手にもこの石庫門住宅が連なり、VV(薇薇)やMG(マリゴールド)が暮らす家もその一つである。
    茶話3話「子供たちの眠る部屋」その他登場する。
    VVたちの生活拠点としての“路地裏の家”
    レオンが夜に訪れる時の緊張感を演出する狭い路地や
    商店街と住民の距離の近さを象徴する構造など
    石庫門は、幸福路の世界観を支える“舞台装置”として欠かせない存在である。

    【資料:イメージ画像】

    石庫門の門戸が閉じたところ
    石庫門の弄堂・総弄(メインの路地)